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凍結胚移植

凍結胚移植について説明いたします。

凍結胚移植の歴史 世界では、1983 年にヒトでの妊娠・分娩例の報告
日本では1989 年、山形大学、東京歯科大市川病院が初めて妊娠に成功
北海道では1991年、神谷・森若らが初めて妊娠、分娩に成功
凍結胚移植の従来の適応
1.多胎妊娠の予防

移植胚数は3個までに制限し、三つ子以上の多胎妊娠を予防します.
表に示すように、4 個以上胚移植を行っても妊娠率の向上は望めず、多胎妊娠の頻度が上がるだけです.

移植胚数

妊娠率

多胎率

1

9.8%

0.0%

2

16.0%

5.6%

3

29.7%

10.7%

4

32.9%

21.1%

5

29.3%

19.8%

6個以上

30.7%

31.0%

2.余剰胚の有効利用 移植胚数を制限することで余った胚を凍結保存します.たとえば 9 個の受精卵ができれば、3個新鮮胚移植を行い、6個を凍結保存して二回に分けて胚移植することができます.それにより、一回採卵当たり計 3 回の胚移植が可能となり、妊娠率の向上が期待できます.
3.経済的、精神的、肉体的負担の軽減 一回の採卵で複数回胚移植できれば、さまざまな負担を軽くできます.
凍結胚移植の適応の拡大

近年、上記の適応に加えて、OHSS 重症化の予防と生産率の向上を目的として、選択的胚凍結保存(全受精卵凍結保存)を行うようになりました.これは、新鮮胚移植をしないですべての受精卵を凍結保存とし、数ヶ月後に自然周期あるいはホルモン補充周期で凍結胚移植を行うものです.以下のような症例に行います.

血清 E2の高値例
子宮内膜の不良症例
頻回の新鮮胚移植で妊娠しない症例
Early P4 (採卵前の HCG を注射するときに、すでに黄体ホルモンが上昇している)の症例

凍結の原理

細胞を脱水しつつ凍結します.

  • 急激に凍らせると..細胞内の水(自由水)が氷晶を形成し、細胞を物理的に壊します(細胞内氷晶形成).
  • 脱水しすぎると...細胞内の溶質濃度が上がりすぎて蛋白などの構造変化をおこします(溶質効果).

したがって、脱水しつつ(しすぎないように)ゆっくりと凍らせます.そのためには、

 1.プログラムフリーザー
 2.凍結保護剤(不凍液)

が必要です.
 当院では、凍結保護剤にPROH(プロパンダイオール)、ショ糖を用いて、主に前核期(受精の翌日、分割の前)で凍結しています.
 凍結・融解による受精卵のダメージの確率は 5 %以下です. 95 %以上は融解時に生存していますが、すべての受精卵が分割するわけではありません.融解した受精卵のうちおおむね 70-80 %が分割して、胚移植できます.ですから、10 個の受精卵を前核期で凍結保存した場合、7 個以上は胚移植までもっていけるわけです.

凍結の方法 凍結保護剤を使って、二段階の処理後プログラム・フリーザーで約100分くらいかけてゆっくり凍結します.融解は、室温で急速融解後、三段階で凍結保護剤を除去します.


凍結胚移植の実際
自然周期法

尿中LHや経膣超音波での卵胞経のモニタリングで、排卵時期を確認して融解し、胚移植する方法です.
排卵直前にHCGを投与する場合もあります(下図).
長所としては、薬剤費用があまりかからないということです.
短所としては、頻回のホルモン値や卵胞のモニタリングが必要ということと、排卵の時期を逃すとキャンセルせざるをえないため、比較的キャンセル率が高い、ということです.


GnRH併用ホルモン補充周期法

排卵のない症例(PCOSなど)や、egg donation (卵子の提供:早発卵巣不全など)の際に始まった方法です.GnRHアナログを使って自然の排卵を止め、人工的に卵胞ホルモンと黄体ホルモンを投与して、子宮内膜を着床しやすい状態にして凍結胚移植を行います(下図).
 長所としては、胚移植日があらかじめ予定できること、ホルモン値や卵胞のモニタリングの必要がないので通院回数も少なく、自然周期法と比較してキャンセル率が低いということです.また、着床に適した良い内膜ができやすいので、われわれのデータでは、35才から40才までの年令層では、あきらかに自然周期法よりも妊娠率が良いです.
 短所としては、薬剤費用が多少かかる、ということと、皮膚の貼り付け剤を用いますので、皮膚がかぶれるひとがいます.


いずれの方法も、排卵誘発剤を使わないので、OHSSの心配はありません.
胚移植そのものは、通常の体外受精・胚移植と同様な方法で行います.

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