適切な不妊治療を受けるために必要な知識

 

国際医療技術研究所 IMT College

荒木重雄

どのような場合に不妊治療を必要とするか

 妊娠を望み2年以上夫婦生活を営んでも妊娠に恵まれない場合を不妊症と呼びます。避妊しなければ2年以内に約90%のカップルが妊娠しますから、約10%の方が不妊症ということになります。このようなカップルが、従来から一般に行われてきた不妊治療を受けると約半数が妊娠に至ります。

一般不妊治療の難しさの理由

 不妊症の原因は単純ではなく、大きく分けても10あまりの原因が考えられ、その中から一つあるいは複数が関与しています。しかし、個々の方の不妊原因を確実に診断することは必ずしも容易ではありません。また、妊娠を成立させるために医師が実際に関わることができる部分は限られていました。そこで、科学的根拠のない習慣的治療に期待することもありました。

一般不妊治療によって妊娠に至るまでの治療期間

 一般不妊治療を2年ほど受けても妊娠に至らないカップルは、そのまま治療を繰り返しても妊娠することは少なく難治性不妊症と呼ばれ、一歩進んだ高度生殖医療による治療が必要となります。

一般不妊治療で妊娠できない場合の対応

 高度生殖医療を受ける場合、患者の掛かりつけの産婦人科医や不妊カウンセラーの意見、またいろいろな刊行物を参考に病院を選ぶことになります。しかし、いろいろな施設の医療内容を知ることはなかなか難しいことです。不妊治療の進歩を強調するあまり、十分な実績のない治療を一般の情報誌が取り上げる傾向もあり、不妊に悩むカップルに過剰な期待を抱かせていることも否定できません。

難治性不妊に対する高度生殖医療による不妊治療

 体外受精-胚移植は、卵子を卵巣から細い針で吸引して体外に取り出し精子と容器の中で受精させ、得られた受精卵(胚)を子宮内へ戻す方法です。精子の状態が極めて悪い場合は、精子を卵子の中へ針で注入しますが、それを顕微受精と呼びます。この方法を用いますと、精液中に精子が認められず無精子症と診断され、従来は不妊治療を諦めざるを得なかった例の約半数は、精巣から精子を採取し治療することができます。

高度生殖医療をめぐる問題点

 体外受精などの高度生殖医療の1周期当たりの妊娠率は20〜30%です。従って、反復治療も必要となることも多く、身体的、精神的、経済的負担を強いることになります。早期に妊娠に恵まれればよいのですが、妊娠に至らない場合は、不妊カウンセラーや体外受精コーディネーターと呼ばれる専門職のアドバイスを参考に、夫婦間の意志の疎通をはかりながら、その後の対応を考える必要があります。困難な不妊治療は夫婦間で理解を深めながら、お互いに支え合って勧めていただきたいと願っています。不妊治療の最終的目的はご夫婦が幸せな生活を送ることを支援することだと思います。

 

講師紹介 荒木重雄(あらきしげお)、医学博士

 昭和41年札幌医科大学卒後、同大学、群馬大学、米国コロンビア大学医学部にて生殖内分泌を学ぶ。昭和49年からコロンビア大学医学部常任講師に就任、帰国後自治医大産婦人科学講師、助教授、生殖内分泌不妊センター長、自治医科大学看護短大教授、平成12年4月国際医療技術研究所IMT College理事長に就任し、海外との医療協力や医師の生涯教育に力を注いでいる。著書「不妊治療ガイダンス(医学書院)」は好評を博しベストセラーとなる。平成14年10月に上梓した「体外受精ガイダンス」は体外受精の発展の経緯から最新の情報まで網羅した著書として、医師、体外受精コーディネーター、不妊カウンセラーのみならず不妊カップルからも高い評価を得ている。 現在、日本生殖医療研究協会会長としてわが国の生殖医療を率い、不妊カウンセラー、体外受精コーディネーターの養成に力を注いでいる。