| 情報化時代の不妊治療 聖路加国際病院産婦人科・生殖医療センター 佐藤 孝道 |
| 不妊治療を受けるのか、受けないのか、受けるとすればどんな不妊治療を受けるか、どこの病院を受診するか、皆さん迷いますね。その情報源として20世紀は口コミや出版物が利用されました。しかし、21世に入って間もない今、あっという間にインターネットが情報源の主役の座を奪ってしまったようです。今は、「インターネットでみた」とHPをプリントアウトして持ってくる方が増えました。 確かに、インターネットから得られる情報は膨大です。Yahooで『不妊』をキーワードに検索すると、64件の関連サイトが見つかります(2004/6/6)。精子バンクや代理母のサイトから、病院の案内、患者の体験記までさまざまです。インターネッ2001年 聖路加国際病院産婦人科部長・生殖医療センタトからは、どこの病院でどんな不妊治療を受けられるかにはじまり、院長の顔写真はもちろん、花がアレンジされたエントランスやゆったりとした診察室内部まで、時には動画も交えて垣間見ることができます。たくさんの方の体験談まで読むことができます。これらの情報は、うまく利用できれば有益であることは間違いないでしょう。 しかし、何かが足りない、そんな気持ちを抱くカップルも多いのではないでしょうか。何が足りないのか、どうすれば補えるのかをこの講演では皆さんと一緒に考えていきたいと思います。 大切な情報というのは、それぞれのカップルにぴったりと当てはまり、方針を決めていく上で有益でなくてはなりません。あるカップルは体外受精を断念して漢方で体質改善を図ったら妊娠したかも知れませんが、あなた方にそれが当てはまるとは限りません。個人の体験談は、あくまでその個人のものであって、あなた方とは違うかも知れないと思ってみることが大切です。 あなたがみた病院の情報には、この治療で何例が妊娠したというだけではなく、年齢別や不妊原因別、治療回数別の妊娠率が書かれていますか。体外受精についていえば、治療(注射)開始周期あたりの妊娠率や流産率、子宮外妊娠率なども書かれていますか。治療によって起こりうる副作用についてそれがどんなものか、どの程度の頻度で起こるのかが書かれていますか。 精子バンクや代理母のサイトでいえば、将来生まれてくる子どもについて何を考えておかないといけないのか、社会的、法的にどのような問題が起こり得るのかが具体的に書かれていますか。 インターネット上では、心地よい音楽が流れ、花が舞っています。しかし、皆さん方がご存じのように、不妊治療というのは出口が見えないトンネルの中を歩くようなものです。絶望感やためらい、孤独感が襲うこともあります。こんな時に必要なのは、科学的根拠のある情報をきちんと手に入れ、二人で冷静な判断をすることではないでしょうか。「心地よさ」や「逃避」も必要ですが、それだけでは絶対的に不足です。 残念ながら日本には上質の不妊関連情報が入手できるサイトがまだ限られています。本来、個々の病院のばらばらのデータではなく、アメリカのように統一した基準によるきちんとしたデータが公開されなくてはならないのですが、そこに至る道のりは長いようです。英語でも大丈夫という方は、 アメリカの国立医学図書館(http://www.nlm.nih.gov/)、 CDCの体外受精に関するデータ(http://www.cdc.gov/reproductivehealth/art.htm) 不妊カップルのサポートグループ(http://www.resolve.org/) などを参考にされるとよいでしょう。また、 不妊カウンセリング学会のHP(http://www.jsinfc.com/)をご覧ください。認定された不妊カウンセラーや体外受精コーディネーターの名簿が公開されています。あなた方自身の立場に立って、インターネットからの情報について一緒に考えてくれるでしょう。 佐藤孝道(さとうたかみち) 1971年 東京大学医学部卒業 |